企業ブランドについて

1.ブランド価値の変化

ブランドについて考えてみたいと思います。皆さんもドジャーズの大谷選手の986億円の契約金は度肝を抜かれたと思うのですが、これはどう考えてもドジャーズの入場観客数が増えるというだけでは採算がとれません。放映権料やスポンサー収入が増えるということが前提になっています。放映権料も元々はスポンサーからの収入なので、要するにこの価値の多くはスポンサー収入であるといえるでしょう。これは二刀流という希少価値の大谷選手が注目度を高めることでスポンサー収入がさらに跳ね上がったということだと思います。ちなみに大谷選手は個人としても巨額のスポンサー収入を得ています。これは結局、大谷翔平というブランド価値への評価額なのでしょう。サッカーのメッシ選手やエムボバ選手でも同じことがいえると思います。

一方で、日本のプロ野球界で初めて年俸が1億円を超えたのは1986年に落合博満さんの年俸からでした。当時はたいへんな騒ぎでした。また、このことからも王さんや長嶋さんの年俸は1億円いってなかったいうことにもなります。現在から考えると隔世の感がありますが、ブランドの価値というものが、この間に劇的に跳ね上がったということがわかりますね。

2.中小企業にとってのブランド

大谷選手のようなトップアスリートや大企業と違って、中小企業ではブランドなんか関係ないよと言われる方もいるかもしれません。しかし、中小企業にとってもブランド価値は重要です。ブランドは認知度を高め、よいブランドイメージは顧客の購入意欲を高めます。また、社員は自社に誇りを持つことができますし、よい企業ブランドイメージは人材募集面でも有効です。その意味で、むしろ中小企業こそブランド戦略は重要なのです。

3.商品ブランドと企業ブランド

ブランドには商品ブランドと企業ブランドがあります。歴史的には最初にブランド価値が注目されたのは商品ブランドでした。有名なのはコカ・コーラの商品ロゴで、当時商標や著作権が法的に整っておらず、物まね商品が横行していたのですが、コカ・コーラは個性的なロゴで物まね商品と自社商品を区別しました。これが明確な戦略をもった最初のブランド戦略と言われています。ブランドというとグッチやエルメスなどの高級ブランド商品を思い出す方も多いでしょうが、こういうブランド戦略もラグジュアリーブランドと呼ばれる商品ブランド戦略の一つです。商品ブランドを確立することは、商品の差別化、商品価値の向上、顧客への情報発信などの様々な効果があります。

一方、それとは別に近年重要視されているのは企業ブランドです。これは企業としてのイメージや情報の発信性であり、実は中小企業のブランド価値では重要なのはむしろこの企業ブランド価値です。一般に中小企業は自社商品を持っていない場合も多く、商品よりも自社のブランド価値を高めた方が有効な場合が多いのです。企業ブランドの向上は販売面でも有効ですが、人材募集面や従業員の定着面でも有効です。中小企業がブランド価値を戦略的に構築することはますます重要となってきています。

4.ブランド構築の方法

①認知度
ブランド構築には認知度の向上が重要なのですが、認知度とブランドというものは鶏と卵のようなもので、認知度が高まればブランド力が向上しますが、ブランド力が高まることによっても認知度が高まるという相乗効果の関係にあります。そうは言っても最初はプロモーションや営業活動を通じて認知度を高めることから始める必要があります。この時、中小企業で重要なのは、範囲、つまりターゲットを決めることです。地域なのか業界なのか、またはその両方なのか、自社の資源と能力で発信できる範囲のターゲットを決める必要があります。そうしないと資源の分散投資となってしまい、効果が上がりません。

②イメージ
企業イメージの前提となる企業理念からロゴ、マーク、コーポレートカラー、キャッチフレーズなどのVI(ビジュアルアイデンテンティ)を作成するのが一般的です。ただし、中小企業でVIに無理に大きな費用をかける必要はなく、ロゴとして常に同じフォントを使うなどの方法でもよいと思われます。重要なのは発信する理念やイメージを明確にして、一貫性を持たせることです。キャッチフレーズは作った方がよいと思います。

③差別化
企業ブランドの差別化では、どこで自社の特色をだせるかを明確にすることが必要です。地域なのか業界なのか、その両方なのか、その範囲はどこまでなのかを決めます。たとえば、日本で一番高い山や一番大きな湖は誰でも知っていますが、日本で2番目に高い山や2番目に大きな湖は知らない人が多いでしょう。しかし、茨木県の人ならば、多くの人が霞ヶ浦が日本で2番目に大きな湖であることを知っています。茨木県民には霞ヶ浦は差別化された特別な湖なのです。このようにターゲットを適切に設定すれば認知度を高め、差別化をすることが可能です。自社の資源と能力に合わせてターゲットを設定して戦略的にプロモーションをしていく必要があります。

5.まとめ

中小企業のブランド戦略についてさわりだけ述べてきました。ブランド構築には一定の時間がかかり、明日から急に効果をあげられるものではありません。一方で、手をつけなければ、現在進めている企業との差はどんどん開いていくことになります。特に昨今の人手不足時代にあってはその差は甚大な影響があります。将来を見据えて企業ブランドづくりを始めることが重要だと思います。ただし、ブランドイメージづくりばかりに偏るのではなく、中身を地道に充実させていくとも重要です。この両輪があって初めて企業の飛躍があるのだと思います。

中小企業診断士 春原 眞一

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