インボイス制度が始まりました

中小企業診断士・税理士の櫨川です。

令和5年10月1日から適格請求書保存方式(インボイス制度)がスタートしました。昔を思い返してみると、昭和の時代から「売上税」などの名称で何度も導入が議論されてきた消費税は、ちょうど私が税理士試験の勉強をしていた平成元(1989)年4月に創設されました。その後の幾度にもわたる改正により、現在に至っていますが、今回の改正は創設後約35年で最も大きな改正だと感じています。

まずは主な項目の移り変わりを見てみましょう。
・消費税率        創設時3%         ⇒ 現在10%
・免税点         創設時3,000万円      ⇒ 現在1,000万円
・簡易課税制度の適用上限 創設時5億円        ⇒ 現在5,000万円
・みなし仕入れ率     創設時2区分(90%、80%) ⇒ 現在6区分(90%~40%までの10%刻み)

私たち消費者が負担する消費税は、導入時の3%から3倍以上の10%になりました。税率は徐々に上昇するとともに、免税点や簡易課税制度の適用上限は徐々に下がっており、今後も同様の動きになるものと推測します。

今回の改正では、適格請求書発行事業者が発行する適格請求書(インボイス)の保存が義務付けられましたが、次のとおりいくつかの特例もあります。
・3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
・出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)
・生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
・3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
・郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

ますます複雑になる消費税ですので、改正後の取り扱いについて担当者が誤った対応をすることもあるかもしれませんが、細かなことまで神経質になっていては業務が進みません。まずは、基本的な取り扱いを確認したうえで正しい対応を心がけ、もしもミスがあれば速やかに修正しましょう。
「適格請求書等保存方式の円滑な導入等に係る関係府省庁会議」において、軽微な記載不備を目的とした税務調査は実施しないこと、仮に税務調査で軽微なミスを把握しても他の書類での確認や修正インボイスの交付を促す等の対応をすること、制度の定着を図ることが重要であり柔軟に対応していくこと、が確認されています。過度に恐れることなく、適切な対応を心がけましょう。

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