適正価格を取れ!!が本当に良いのか?

こんにちは。中小企業診断士の上條です。

私は仕事柄、経営改善支援をする機会が多くあります。その中でよく議論になることと、私の考え方の一つをお話したいと思います。

企業の経営改善支援とは、業況の芳しくない企業の業績を改善するためのお手伝いをすることなのですが、経営改善の基本的な順序はまず
①必要性のない又は非常に少ない費用を削減し(出血を止める)
②利益を増やす方法を検討する(事業の磨き上げ)
という流れで進んでいきます。
①についてはお金をムダに使っている部分なので削減するに越したことはないのですが、②についてはいくつかの方法があり、どれを選択するべきか迫られます。

具体的に、利益を増やすには
①同じ原価率で売上を伸ばす(たくさん売る)
②同じ商品の価格を上げ売上を伸ばす(値上げする)
③安く商品を仕入れ同じだけ売る(原価を下げる)
という3つの方法があります。

この中でどの方法が一番良いか考えるとき、利害関係者からは
「安売りをしすぎている。適正価格を取った方がよい。」
という②の意見が経験上多く出ます。
なぜこのような意見が多いのでしょうか?
それについて下の図で説明します。

例えば現状10の売上、原価が5で、5の粗利がある事業があったとします。
粗利とは「売上」から「材料費や外注費など、その売上と直結する費用」=「売上原価」を引いたものです。
この粗利を1増やすために①たくさん売る②値上げする③原価を下げる
をそれぞれ行ったとすると
①、③については20%数量増加、原価削減が必要であるのに対し
②については10%の値上げで済みます。
「仕入先から20%価格を下げてもらうのは無理だし
今より20%もたくさん売れる根拠ってあるの?
今まで安く仕事を受け過ぎていたから10%くらい値上げしたとしてもこれが適正価格だからお客さんも納得するはず。」
という理由から値上げの提案に至ります。

しかしながら、この「値上げ」が最善の策なのでしょうか?
先程の図の下に「仕事量」という指標を記入してあります。
これは自社で受けられる仕事の総量に対し、どれだけの仕事を受注しているかを示したものです。
図においては現状の仕事量は60%であり、MAXで受けられる仕事量まであと40%余裕がある状態です。
②値上げ、③原価削減は仕事量が増えないのに対し①たくさん売ることは売上の増加に比例し仕事量が増えます。
これだけを見ると同じ利益1増やすのに仕事量が増える「①たくさん売る」というのは効率が悪いのではないかと思ってしまいます。
しかし「たくさん売る」ということは、「売ったもの自体の粗利が赤字(基本的にあり得ない)」にならない限り、少しずつ利益が積み重なっていくということです。
「どんなに薄利であろうと赤字でない限りどんな仕事でも受ける。」この考え方は経営改善中の企業、仕事量にまだ余裕がある企業にとってとても大事だと考えます。

とてもお腹が空いていて明日まで生きられるか分からない人が、食べ物の好き嫌いを考えるでしょうか?まずお腹を満たすことを考えると思います(毒キノコ=赤字は当然食べないですが)。お腹がいっぱいになってから、好きな物を選んで食べるでしょう。

企業においても仕事を受けられる場合は「薄利でも、値下げして限りなく粗利がゼロに近くなったとしても、赤字でないものはすべて受ける」という選択をしても良いのではないでしょうか?
これ以上仕事を受けれなくなって初めて「利益率の高いものから仕事をする。忙しいから値上げする。」という方針を取ることができるようになるのではないかと考えます。

当然ながら業種、企業の置かれた立場等により取るべき戦略は変わってくることと思います。そのような中でも、以上のような考え方が少しでも参考になれば幸いです。

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