デフレ脳からの脱却

こんにちは、中小企業診断士の等々力です。

ここ数年、光熱費、食材、外食費などあらゆる商品やサービスで値上げが行われました。一時期よりは沈静化しつつあるとはいえ、世の中のこうしたインフレ傾向はまだまだ顕著に続いています。そしてその割には賃金が上がらないため、生活が苦しくなっているという家庭が増えていると思います。事実、実質賃金(名目賃金を消費者物価指数で割った賃金)はコロナ禍より下がっているという統計データもあります。

一方、運輸・物流業などでは労働時間適正化に端を発した圧倒的な労働力不足が見込まれ「2024年問題」というものが現実に迫ってきています。例えば長野市でも運転手不足で日曜日のバス運行がなくなってしまったというニュースがまだ記憶に新しいところです。

そして今後、日本と諸外国との金利差による円安傾向もしばらくは続くと見られていますし、日本の労働人口減少と少子高齢化がますます加速することはほぼ避けられないでしょう。すなわち日本は「インフレの継続」と「慢性的な人手不足」がしばらく続く経済状況です。

そうした経済状況下で先日、象徴的なニュースがありました。日経平均株価がバブル絶頂期の1989年以来34年ぶりに史上最高値を更新したというニュースです。これは半導体関連メーカーを始めとする日本企業の好業績や、円安、株主重視政策への転換、中国から日本への投資シフトなど様々な要因が考えられるものの、日本の「失われた30年」が転換点を迎えた象徴の一つであるとも考えられます。

その「失われた30年」では、人員・賃金抑制→消費者の購買力低下→商品やサービスの価格低下→企業の売上減少→投資抑制→(最初に戻る)、と言ったデフレスパイラルが日本のファンダメンタルズでした。それが逆回転を始め、人員不足→賃金アップ→消費者の購買力アップ→商品やサービスの価格上昇→企業の売上増加というインフレスパイラルになっていくことが”予想”されるということです(ただし賃金アップは2024の春闘の結果等、まだ不確定要素が大きい)。

ところで皆さん、34年前と言えば何をやられていたでしょうか?生まれていない方もいらっしゃるとは思いますが、多くの方は私のようにまだ学生であったり、仕事をしていたとしても若手としていわば「修業中の身」だったのではないでしょうか?

つまり、ほとんどの人にとって今のインフレ状況というのはこれまで社会人として経験してこなかった状況ということになります。そして、とにかく販売価格を下げる、外注を使ったり賃金上昇幅を圧縮したりリストラして人件費を削減する、少ない仕事をワークシェアリングする、少しでも利益が出れば内部留保としてため込むといったことがデフレ時代の正解とも言えました。ただ、そういった「過去の成功体験」は今後通用しづらくなってきたと言えるのではないのでしょうか?

もちろん無駄な経費の削減といった「守りの経営」も重要なことなので、それはそれで推し進めていくべきだとは思います。ただ今後はそれ以上に売上高(特に顧客単価)のアップと、それにより得られた原資を賃金や育成などの人材投資、機械やITへの設備投資に回していくこと等が、企業生き残りと持続的成長のために重要になってくるのではないでしょうか?いわゆる「デフレ脳」から早めに脱却し、インフレ時代にマッチした「攻めの経営」に舵を切っていかざるを得ないのではないでしょうか?

将来がどうなるかは正確には誰にも分かりませんし、違う見方をされる方もいらっしゃるかもしれませんが、いずれにしても経営者・経営層の皆さんには日々の目の前の事象だけでなく世の中の大きな流れや経済状況にもぜひ敏感になっていただければと思います。また、そうした「木を見て森も見る」という視点で経営方針を固めて、次の手を打っていっていただければと思います。

最後に、もしそれがヒト・モノ・カネといった面で難しいと判断される場合は、当協会(長野県中小企業診断士協会)にご相談いただくなどして、中小企業診断士の支援を仰ぐことも選択肢の一つに入れていただければ幸いです。

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