ものの「価値」について

こんにちは。中小企業診断士の藤井亜子です。

私は日頃、診断士兼デザイナーとして、主にBtoC事業者さんのご支援をしています。

初のコラム執筆である今回は、私の得意分野(?)である美術を題材に、ものの「価値」について考えてみたいと思います。

先日、家族で徳島県鳴門市へ旅行に行ってきました。行き先は、世界初の「陶板名画美術館」として知られる大塚国際美術館です。国内最大級のこの美術館ですが、展示作品およそ1,000点は、すべて陶板で作られた精巧なレプリカ。つまり、「本物」が一つもない美術館なのです。

美術品の価値といえば……よく日曜日のお昼のテレビ番組で、作品を鑑定して値段をつけていますよね。お父さんが百万円で買った壺も、鑑定士の「偽物です」の一言で千円になる、非常にスリリングな番組です。鑑定額は作品の状態や数にも左右されるでしょうが、大前提として「本物は高くて、偽物は安い」、そんなイメージがあります。

では、「本物」が一つもない、いわば「偽物だらけの美術館」に、いったいどんな価値があるのでしょうか?ここでは、私が実際に行って感じた魅力を3点ご紹介します。

魅力①:世界中の名画が1箇所で楽しめる

大塚国際美術館には、古代ローマの壁画からピカソの「ゲルニカ」まで、西洋美術の名作が勢ぞろいしており、それらが美術史の変遷に沿って展示されています。ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」やフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、モネの「睡蓮」など、誰もが知っているようなメジャーな作品を一通り見ることができるのは、世界中でもここだけでしょう。5歳の息子も、自分の知っている絵をたくさん見ることができて嬉しかったようです。

魅力②:原寸大の名画が間近で見られる・さわれる

名画がオリジナル作品と同じサイズで楽しめるのも魅力です。例えば先述の「ゲルニカ」は大変有名な作品ですが、そのサイズをご存知でしょうか?なんと、縦3.5m×横7.8mもあるこの作品、実物大で見ると迫力満点でした。

逆に、想像よりも小さく感じたのはフェルメールの作品です。彼の作品は40cm四方くらいのものが多く、その筆の精緻さに驚かされます。美術の教科書や画集の中では実物のサイズ感はわからないものですね。また、陶板名画はレプリカであるからこそ、間近で見たり、触ったりすることができ、これも面白い体験でした。

魅力③:「無い作品」を見ることができる

数ある作品の中でも、印象的だった作品が、ゴッホの「ひまわり」です。

【画像】

数点ある「ひまわり」、黄色い背景のものが特に有名ですが、私が気になった絵は鮮やかなロイヤルブルーの背景のもの。初めて見る、美しい作品でした。

帰宅後に調べたところ、この「ひまわり」は、現存していない絵だということがわかりました。展示されていたのは、かつて兵庫県芦屋市にあったものの第二次世界大戦の空襲で焼失してしまった作品を、写真などの資料から復元したものだそうです。

たとえ「本物」が無くなっても、その素晴らしさを現代の我々に伝えてくれる陶板名画。私はそこに、真贋だけでは語れない価値を感じました。

ビジネスというのは、価値を提供してその対価を得ることです。そして、商品の価値は、物理的なモノ自体にある訳ではありません。その商品によって悩みが解決されたり、生活がより豊かに感じられたりすること。それこそが、顧客にとっての価値ですよね。

経営をしていると、商品やサービスの値段を自分で決めなくてはならず、個人事業主の私にとっても「サービスにどう値段をつけるか?」は大きな課題です。一般的な価値だけでなく、お客様ひとりひとりにとっての価値に目を向けることが、そのヒントになるのではないかと思いました。

藤井亜子

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