経営者の「聴く力」が組織を変える ― アクティブリスニングの実践と効果

なぜ今、経営者に「聴く力」が必要なのか
あなたは、眼の前にいる人の話を100%聞けていますか?

話を遮らず、敬意と好奇心を持って相手の話をすべて聞くことができていますか?

この質問にYESと自信を持って答えることができる方は意外と少ないのではないでしょうか。

私は経営改善支援を行う中で、様々なトラブルを目の当たりにしてきましたが、その根本原因のほとんどがコミュニケーションによるものと言っても過言ではありません。
その課題を解決する最もシンプルで効果的な方法が、「相手の話を聴くこと」なのです。

今、巷では様々な「聴く技術」が出回っていますが、その中でも私がおすすめするのはマッキンゼーで14年間活躍した赤羽雄二氏が提唱する「アクティブリスニング」です。

参考:赤羽雄二著『自己満足ではない「徹底的に聞く」技術』
https://amzn.asia/d/3kLRhyq

赤羽氏は、44万部の売上を誇る「ゼロ秒思考」の著者でもあり、マッキンゼーから独立された後もベンチャー支援や中堅・大企業の経営改革を進めるコンサルタントとして、常に最前線でご活躍されています。

アクティブリスニングがもたらす3つの変化

私は、経営力強化の一環としてクライアントの経営幹部の方に「アクティブリスニング」のワークを提供しています。理由はシンプルで、経営陣の聞く力は経営改善を進める土台であり、やるとやらないでは改善の成功率が天と地ほどに違うからです。

相手に興味関心を持ち、徹底的に耳を傾けることで、次の3つの変化が生まれます。

1.トラブルの芽を早期発見
従業員の小さな違和感や不安を早い段階でキャッチできるようになります。「なんとなく言いづらい」という雰囲気が消え、問題が大きくなる前に対処できます。

2.問題の本質が見えてくる
表面的な問題の奥にある真の課題に気づけるようになります。「売上が伸びない」という問題の裏に、実は「社内のコミュニケーション不足」があった、といった発見が増えます。

3.信頼関係による課題解決の加速
「この人なら話しても大丈夫」という安心感が生まれ、建設的な議論ができるようになります。結果として、課題解決のスピードが格段に上がります。

「今さら変われない」70代社長の変化

実際に、ある企業でこんな経験がありました。

支援を始めた当初、他の幹部から「社長の聞く姿勢が弱い」との指摘がありました。70代の社長ご自身も課題意識はお持ちでしたが、「今さら変えられない」と少し諦め気味でした。

しかし、アクティブリスニングのワークに取り組んでいただくと、その姿勢は大きく変わっていきました。最初は半信半疑だった社長が、相手の話に身を乗り出し、相槌を打ち、質問を重ねる姿を見て、私自身深い感動を覚えました。

変化は想像以上に早く現れました。

ワークを行った次の訪問時、複数の幹部から「社長がすごく良くなりました」「話しやすくなった」という声が上がったのです。さらに興味深いのは、社長以外の幹部からも「これまで普通に話せていた人から、初めて本音を聞けた」という感想をいただいたことです。

組織のトップが変わると、組織全体の空気が変わる。まさにその瞬間を目の当たりにしました。

ちなみにアクティブリスニングできているかどうかは、相手の反応を見ればすぐに分かります。

しっかり聞けているときは非常に信頼されるので、今まで話してくれなかったセンシティブなことを語ってくれたり、これまでより沢山話してくれるようになったり、態度が全く異なります。

定着への課題と解決策

もちろん、すべてが順調というわけではありません。

「ワークの中ではできるんですが、日常業務に戻ると…」
「訪問の期間が空くと元に戻ってしまう」

こうした声も多くいただきました。アクティブリスニングの良さは“すぐに成果を体感できること”にありますが、“習慣として定着させる”には工夫が必要です。

実践を続けるための3つのポイント:

1.毎日5分の「聴く時間」を作る
朝礼後の5分間、誰か一人の話をじっくり聴く時間を設ける

2.「聴いたメモ」を残す
相手の話の要点と、自分が感じたことを簡単にメモする習慣をつける

3.仲間で定期的に振り返りをする
同じ課題を抱えている仲間を作り、日常生活での実施状況についてシェアする

「聞く」という行為はシンプルですが奥深いものです。一度できたから終わりではなく、継続して取り組む仕組みづくりが大切です。

今日から始められる第一歩

アクティブリスニングは、経営者だけでなくすべてのビジネスパーソンにとって重要なスキルです。特別な訓練は必要ありません。必要なのは「相手に100%集中する」という意識だけです。

ぜひ、今日一日、誰か一人の話を「最後まで遮らずに聴く」ことから始めてみませんか。スマートフォンは伏せて、パソコンから目を離して、相手の目を見て、最後まで。

もしかすると、いつもとは違う何かが見えてくるかも知れません。

合同会社T&Tパートナーズ
代表執行役員 平井 孝典(中小企業診断士)

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