経営デザインシートで将来のありたい姿を考える

中小企業診断士の大橋です。私は企業内診断士ということもあり、企業の支援経験は多くありませんが、勤務先では約20年間、特許を中心とした知的財産業務に携わってきました。その中で強く感じてきたのは、知的財産は持っているだけでは価値を生まないという現実です。

1. 知的財産と経営をつなげる
経営者の方から「知的財産が経営にどう役立っているのかわからない」という声をよく耳にします。これは企業規模に関わらず珍しいことではありません。多くの場合、知的財産活動と経営活動が結びついていないためです。
しかし知的財産は、過去の成果であると同時に、将来の経営を考えるための重要なヒントでもあります。その位置づけを整理するためのツールが、経営デザインシートです。

2. 経営デザインシートとは
経営デザインシートは、内閣府の知的財産戦略本部が公開しているもので(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/index.html)、以下はその雛型の一例です。

経営デザインシートの特徴は、「将来のありたい姿」から逆算して現在を整理する点にあります。「今できること」や「今ある制約」から考えるのではなく、まず未来を描き、その実現に必要な資源や仕組みを見直していきます。
この整理の中には、当然ながら特許、技術、ノウハウ、ブランドといった知的財産も含まれます。経営デザインシートを使うことで、知的財産を単なる保有物ではなく、価値創造のための経営資源として再整理できます。

3. 知的財産を見る視点が変わる
経営デザインシートを作成すると、知的財産を「何のために存在するのか」という視点で捉えられるようになります。
・将来の会社像を実現するために不可欠な技術は何か
・ その技術を支える特許やノウハウはどれか
・ 将来像と結びつかない知的財産はどれか
こうした整理を通じて、知的財産を未来に向けた経営資源として再定義できます。特許や商標は「取るか、取らないか」という議論になりがちですが、本来は「なぜ必要なのか」「どの事業を支えるのか」を先に考えるべきです。経営デザインシートで将来像が明確になっていれば、
「この特許は将来のどの事業に意味があるのか」
「今は取得しなくてもよいのではないか」
といった判断がしやすくなり、権利取得が目的化することを防げます。

4. 知的財産を経営の言葉で語る
知的財産活動の意義が社内外に伝わりにくい理由の一つは、経営の文脈で語られていないことにあります。経営デザインシートを使えば、
「この技術は将来こういう価値を生む」
「この特許はこの事業を支えるために存在する」
といった形で、知的財産を経営の言葉に翻訳できます。これは社内の意思統一だけでなく、取引先や金融機関への説明にも有効です。

5. まずは作ってみる
経営デザインシートは、一度作って終わりではありません。事業環境や技術が変われば、見直す前提のツールです。変化に応じて更新することで、知的財産は生きた経営資源になります。
完璧なものを作る必要はありません。不完全でもまずは作ってみることが、将来のありたい姿を考える第一歩になります。
日々の課題解決に追われる経営者の皆様こそ、ぜひ一度立ち止まり、未来のありたい姿を描く時間をつくってみてはいかがでしょうか。

関連記事

  1. 異議あり!「事業再構築補助金」 その2
  2. 異議あり!「事業再構築補助金」 その1
  3. 人間力の大切さを感じて
  4. 原価管理と官僚制の逆機能
  5. 消防団×中小企業診断士!?
  6. なぜ事業計画を作る必要があるの??
  7. デジタルとアナログ
  8. ブランディングは「言葉」から始めよう
PAGE TOP