経営に迷ったとき、立ち戻る“軸”を持つ

こんにちは。中小企業診断士の髙木一貴です。
長野県では6月10日に梅雨入りしました。しとしとと降る雨に季節の移り変わりを感じながら、日々の足元を整えるような時間を大切にしたい季節です。
<「新しいことを」と思ったときこそ、立ち止まる視点>
経営をしていると、「今のままでいいのかな」「何か新しいことを始めなきゃいけないのかな」と、不安や迷いを感じることがあります。
売上が伸び悩んだときや、事業の将来が見えづらくなったときほど、つい“新しい一手”を打ちたくなるものです。
しかしながら、私は最近、そういうときこそ焦らずに、今の事業をじっくり見つめ直すことの大切さをあらためて感じています。
経営のご相談を受けるなかでも、「新商品を出したい」「新しい販路を開拓したい」といったお声をよく耳にします。もちろん、それ自体は前向きで素晴らしいことです。
ただ、よくお話を伺っていくと、実は既存の商品やサービスにまだ改善の余地があることも多くあります。限られた経営資源を分散させるのではなく、まずは“いまあるもの”の価値を最大限に引き出す。それが、経営の安定と継続につながる一歩になるのではないかと私は思っています。
<「必要な利益」から逆算するアプローチ>
経営改善の手法はさまざまですが、ひとつの考え方として、「必要な利益から逆算して考える」というアプローチがあります。
ここで言う“利益”とは、単に営業黒字になれば良いというものではなく、借入金の返済、将来の設備投資、さらには会社の持続的な運営を支えるために必要となる水準のことです。
この「自社にとっての必要利益額」が明確になると、その実現のためにどれくらいの売上が必要か、どれだけの数量を販売すれば良いのか、どのようにコスト構造を見直すか、そしてどこに注力すべきか、といった道筋が自然と見えてきます。
利益目標を“根拠ある数字”として位置づけることで、経営の見通しが立ちやすくなり、日々の意思決定にも一貫性が出てきます。
<経営にこそ、“自分なりの判断軸”を>
そしてもうひとつ、大切にしたいのが「判断の軸を持つこと」です。
変化の多い時代だからこそ、自社は何を大切にしたいのか、どのような未来を描いていきたいのか。その軸があるだけで、判断がぶれにくくなります。
たとえば、「この仕事を引き受けるか」「人材をどう活かすか」といった場面でも、軸があることで納得感を持って決断できるようになります。
経営とは、日々の選択の積み重ねです。だからこそ、迷ったときに立ち戻れる“自分なりの基準”を持っておくことが大切です。それが、会社を長く、安定的に続けていくための確かな支えになると私は考えています。