奇策のようで実は正攻法・・・ゴディバのチャネル戦略
中小企業診断士の内田英明です。
「バレンタインディ」にちなんで、この時期にチョコレートを購入することがよくあります。我が家では、チョコレートはプレゼントではなく、家族で一緒に楽しむことにしているのですが、年に1回のことなので、松本市内のパルコにあるゴディバの店舗まで出向き、家族の「プチ贅沢」として購入し、私自身も美味しくいただいています。
実はゴディバについては、チョコレート自体もさることながら、そのマーケティング戦略にも注目したいです。そう考えるきっかけになったのは、今から10年以上前にはじまったコンビニエンスストア(CVS)での商品販売です。
「なぜラグジュアリーブランドがコンビニに?」
「コンビニなんかで売ったら、ブランドイメージが低下するのでは?」
というのが当初の率直な感想でした。
マーケティングミックスの定石では、高級ブランド品は、専門店など限定された経路(「専売的チャネル政策」)で販売されるべきと考えるのが一般的だと思われます。実際、アパレルや宝飾品などのラグジュアリーブランドは、まさにこのやり方が広範に実行されています。高級感がある専門店で販売されれば、高級アパレルと同様に、ゴディバもブランドイメージは確実に高まるはずです。他方で、店舗の敷居が高くなれば、気軽に購入しようという消費者はかなり少数になるでしょう。ブランドイメージが高まれば、売上や利益は増加するのか・・・・・ビジネスの視点で考えると、ブランドイメージの向上は目的ではなく、本来収益アップにとっての手段であるはずです。
この点について、ゴディバジャパンの社長であるJ.シュシャン氏がその著書「ターゲット」でわかりやすく説いています。
贈り物として買う(あるいはもらう)ことはあっても、自分のために買っていた消費者は少数派・・・・・これがかつての販売の実態でした。ここで重要なのは、ゴディバが販売しているものは高額の宝飾品ではなく、チョコレートという食べ物だということです。自分へのご褒美としてプチ贅沢のチョコレートを手軽に買いたい・・・・・このニーズに気づいたことで、CVSをチャネルに組み込みました。この時の戦略コンセプトが「アスピレーショナル(憧れ)&アクセシブル(行きやすい)を実現する」です。高級感と手軽さは、「or」ではなく「and」の関係にもなり得るというのは、まさに「目から鱗が落ちる」です。
マーケティングミックスは、4P(製品、販売経路、価格、プロモーション)の各要素の相性を考慮することが重要ですが、他方で4Pの組み合わせは、常に顧客視点で発想し、何がKBF(重要な購買要素)なのかを考えなければなりません。プチ贅沢のチョコレートにおけるKBFは、「アクセシブル」だったのである。
ゴディバのマーケティング戦略は、奇策のようで実は正攻法であり、さまざまな場面で応用できるケースだと思います。
以上