「テセウスの船」と事業承継 ― 変わり続けるからこそ、続いていく

こんにちは。中小企業診断士の中村です。
目まぐるしく事業環境が変化する中小企業にとって、喫緊の課題の一つが「事業承継」ではないでしょうか。

事業承継の話題になると、私は「テセウスの船」という問いを思い出します。
それは、ある船の部品を一つずつ新しいものに取り替えていったときに、出来上がった現在の船は果たして“過去存在した元の船”と同じものなのか、という問いです。

事業承継も、どこかそれに似ているように思います。

社長が代わり、社員が入れ替わり、扱う商品やサービスが少しずつ変わっていく。デジタル化や働き方改革への対応も避けては通れません。「ここまで変えてしまって、本当にうちの会社なのだろうか」と、不安を口にされる先代経営者も少なくないかと思います。

日々こうした課題を考える際に大切にしているのは、「変えてはいけないもの」と「変えてよいもの」を相談者と一緒の視点で考えることです。

目に見えるモノやヒトは変わっても、創業の想い、地域との関係、仕事に向き合う姿勢といった“見えない価値”は、多くの企業でしっかりと受け継がれていくべきだと考えています。

信州の企業には、長い歳月をかけて磨かれた技術や積み重ねられた信頼、そして何にも代えがたい人とのつながりがあります。これらは決して、一朝一夕で築けるものではありません。

事業承継とは、会社をそのまま残すことではなく、根底に流れる「その会社らしさ」という目に見えないバトンを、次の世代に手渡すことなのだと感じます。

一方で、時代の変化に合わせて舵を切る勇気も必要です。後継者の方からは、「先代のやり方を尊重したいが、自分なりの経営もしたい」という声をよく聞きます。その葛藤は、とても自然なものです。

テセウスの船が少しずつ全ての部品が入れ替わったとしても「これは、テセウスの船だ」と思う人がいるように、企業も変化しながら進んでいくことこそが、本来の姿なのかもしれません。

事業承継は、ゴールではなく新しい航海の始まりです。

その航海図を共に描き、ときに寄り添い、ときに背中を押す。そんな伴走者としての役割こそが、私たち中小企業診断士の本分ではないかと感じています。私自身も一人の診断士として、常にその原点を胸に刻み、歩み続けていきたいと考えています。

「変わり続けているからこそ、続いていく」

そんな視点を大切に、信州の企業の事業承継を支えていければと思います。

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