社員の幸せを考える経営

こんにちは。中小企業診断士の中澤香織です。
数年前、診断士仲間から「これは一度読んでみた方がいい」と勧められた本があります。坂本光司氏の『日本でいちばん大切にしたい会社』です。
正直なところ、当時の私は経営を考える上で、売上や利益、成長戦略といった視点を重視していました。もちろん今でもそれらは重要だと考えています。しかし、この本を読んでから、私の経営に対する価値観は大きく変わりました。
特に印象に残ったのが、長野県伊那市に本社を置く伊那食品工業株式会社の事例です。同社は「かんてんぱぱ」のブランドで広く知られていますが、その根底にあるのは「いい会社をつくりましょう」という経営理念です。ここでいう「いい会社」とは、単に利益を追求する会社ではなく、社員が安心して働き、周囲から信頼され、長く存続する会社を意味しています。
私はこの本を読んで以来、企業が大切にすべき人たちの順番について考えるようになりました。
まず社員とその家族。 次に取引先とその家族。 そして顧客、地域社会。 最後に株主。
もちろん、どの存在も企業にとって欠かせません。しかし、企業活動の中心にいるのは社員です。社員が心身ともに健康で、安心して働ける環境があるからこそ、お客様への価値提供ができ、取引先との信頼関係も生まれます。その結果として利益が生まれ、企業が発展していくのだと思います。
私は企業内診断士です。現在は中小企業支援を本業としているわけではなく、企業の中で管理職として働いています。
そのため、この考え方は診断士としての理論ではなく、むしろ日々のマネジメントの中で実践したい信念になっています。
例えば、不要な資料作成や形式的な会議を減らせないか。もっと効率的な仕事の進め方はないか。若手社員が成長できる機会を増やせないか。休暇を取得しやすい雰囲気を作れないか。
管理職になると、組織目標や業績へのプレッシャーもあります。しかし一方で、部下にはそれぞれ家庭があり、人生があります。そう考えると、「社員とその家族を大切にする」ということは、単なるきれいごとではなく、管理職として果たすべき重要な役割なのではないかと思うようになりました。
中小企業診断士という資格は、経営改善や成長戦略を支援する専門家として知られています。しかし私は、経営の本質は数字だけではないとも感じています。
人材不足が深刻化し、働き方や価値観が大きく変化する時代だからこそ、「この会社で働いてよかった」と社員が思える組織をつくることが、結果として企業の競争力につながるのではないでしょうか。
診断士仲間に勧められて何気なく手に取った一冊でしたが、『日本でいちばん大切にしたい会社』は、私にとって経営観を見つめ直すきっかけとなりました。
そして今でも、管理職として何か判断に迷ったときは、「その選択は社員とその家族の幸せにつながるだろうか」と考えるようにしています。
長野県が誇る伊那食品工業の実践から学んだこの考え方を、これからも大切にしていきたいと思います。







