Excelから始める、小規模企業のAI活用

言わずと知れたMicrosoft Excel。日本のみならず世界で最も使われているPCアプリケーションと言えるでしょう。
実際、私もこれまで小規模企業を含めた数多くの現場を訪問してきましたが、Excelを導入していない企業には一度も出会ったことがありません。そして私自身も含め、経営・事務・営業などでPC作業をする人のほぼ100%が日常的にExcelを使っているはずです。
そうであれば、巷で言われる「DX推進」や「AI導入」も、まずはExcelとそれに関連する業務を起点にするのが最も現実的で効果的と言えるのではないでしょうか。特に、IT化の遅れが指摘されがちな小規模企業ほど、この考え方がよく当てはまります。
そこで今回は、小規模企業がExcel業務にAIを組み合わせて、すぐに成果を出しやすい具体的な事例を簡単に4つほどご紹介します。

事例1:乱れたデータの整理・表記統一(コピペするだけで完了)

長年蓄積された顧客名簿や仕入先リストで「(株)と株式会社が混在している」「全角・半角スペースがバラバラ」「住所の丁目や番地の書き方が統一されていない」といった理由で、フィルターや集計がうまく機能しないことがあります。
これまでは1件ずつ手作業で置換・修正していた作業も、乱れたデータをそのままAIに貼り付け、「法人格の表記を全角『株式会社』に統一し、電話番号のハイフンを揃えて重複を整理して」と指示するだけで完了します。丸一日かかっていた名簿のクレンジングが、わずか数分でクリーンな状態に生まれ変わります。

事例2:集計結果からの「報告・コメント」の下書き作成(文章化をお任せ)

数字の集計が終わった後、そのデータを読み解いて「所見」や「月次報告のコメント」を文章化する作業に頭を悩ませている経営者や管理者の方も多いはずです。
Excelでまとめた売上表や経費の数字をAIに見せ、「この月次推移から、前月比で大きく伸びた要因と落ち込んだ要因を3つ箇条書きで抽出し、報告書用のコメント下書きを作って」と依頼します。数字の背景にある傾向をAIが客観的に言語化してくれるため、報告書作成にかかる思考時間を大幅にカットできます。

事例3:PDFや紙の請求書・伝票の「データ抽出」(手入力をゼロに)

月末の請求書処理や日々の伝票入力で、PDFや紙を見ながら手作業でExcel台帳に1行ずつ打ち込む作業は、多くの現場で大きな負担になっています。入力ミスも起きやすく、確認作業にも時間がかかります。
現在主流のAIツールは画像の読み取り精度が非常に高いため、PDFや伝票の写真をアップロードして「発行日、取引先名、金額、適格請求書登録番号(インボイス番号)を抜き出して、Excelにそのまま貼れる表形式で出して」と指示するだけで、一瞬でデータ化してくれます。人間はAIが抽出したデータをExcelに貼り付け、最後に目視確認を行うだけで済みます。

事例4:関数やマクロ(VBA)の作成・修正(難所をAIに丸投げ)

Excelを使っていて最も時間を取られがちなのが、「やりたい集計はあるのに、どの関数を使えばいいか分からない」「過去に作られたマクロが動かなくなり、直せる人が退職して放置されている(いわゆる野良マクロ)」といった場面です。ここでAIを活用すると、専門知識がなくても解決できます。
例えば「A列に顧客名、B列に日付、C列に金額がある表で、特定条件の合計を出す数式を作って」と普段の日本語で伝えるだけで、適切な関数(SUMIFSやXLOOKUPなど)とその使い方が一瞬で返ってきます。マクロのエラー画面やコードをそのまま貼り付けて「動かない原因と修正案を教えて」と聞くだけで、修正したコードを提示してくれるため、自前でのメンテナンスが可能になります。

まとめ:まずは「普段のExcel画面」をAIに見せてみることから

小規模企業におけるAI活用は、決して高額な専用システムを導入したり、難しいプログラミングを学んだりすることではありません。
毎日触っているExcelの中で、「手作業で直していたデータの表記」「文章化に悩む集計結果」「打ち直している伝票」「調べても分からない関数やマクロ」を、そのままAIチャットに相談してみる。この小さな一歩から始めるだけで、驚くほど日々の業務は軽くなります。
デジタル化の第一歩として、まずは目の前のExcel業務からAIを活用してみてはいかがでしょうか。

中小企業診断士:等々力浩二

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