積み立てるべきは、お金だけなのか

こんにちは。中小企業診断士の木内孝信です。今朝(R8.3.23)のTV放送で、「NISA貧乏」という言葉が取り上げられていました。
将来への不安から、日々の生活を切り詰めてまで投資に資金を回す。そんな若い世代の姿が紹介されており、考えさせられるものがありました。

折しも、中東情勢は緊迫し、資源確保や物価上昇、世界経済の先行きにも不安が広がっています。
先の見えない時代だからこそ、「少しでも将来に備えなければ」という心理が強まるのは自然なことかもしれません。

もちろん、資産形成そのものを否定するつもりはありません。
年金だけで安心して暮らせるとは言い切れない時代に、自ら備えようとする姿勢は大切です。
しかし、そこで一つ立ち止まって考えたいのです。
私たちが本当に積み立てるべきものは、お金だけなのでしょうか。

私はむしろ、健康で働ける限り、自分で稼ぎ続ける力を持つことの方が、よほど本質的ではないかと思っています。
年金や制度をあてにして生きるのではなく、自分の力で生活を組み立てる。
そのために、学び続け、経験を重ね、環境の変化に対応できる力を身につける。
そうした姿勢こそが、長い人生における最大の備えになるのではないでしょうか。

最近は「リスキリング」という言葉も定着してきました。
しかしそれは単なる学び直しではなく、「何歳になっても自分を更新し続ける」という生き方の問題だと感じます。
お金を積み立てるのと同じように、自分のスキルや経験も積み立てていく。
その発想が、これからますます重要になるはずです。

そして、これは経営にもそのまま当てはまる話です。
企業もまた、先行き不安のなかで「とにかく内部留保を」「まずは目先の資金繰りを」と守りに入りがちです。
もちろん、それも必要です。
ただ、お金だけを蓄えていても、変化に対応できる人材や、新たな価値を生み出す力がなければ、企業の未来は開けません。

もしかすると、会社の社員の中にも、将来不安から生活を削って資産形成に走る“隠れNISA貧乏”がいるかもしれません。
それは個人の問題であると同時に、将来への安心感を持ちにくい社会や職場の空気の表れでもあります。
経営者は、賃金や福利厚生だけでなく、社員が「ここで働きながら成長できる」と思える環境をつくれているかを問われているのだと思います。

不安定な時代に必要なのは、依存ではなく自立です。
ただし、自立とは一人で生きることではありません。
自分の足で立てる人同士が支え合う、相互依存の社会をつくることです。
個人も企業も、外部環境に振り回されるのではなく、自分なりの軸を持つことが求められています。

社会が厳しい、将来が不安だと嘆く前に、
自分はこれからどう生きるのか。
どんな力を身につけたいのか。
何歳まで、どのように働きたいのか。
そうした人生設計を持つことが、もっと当たり前になってよいのではないでしょうか。

お金を積み立てることも大切。
けれど、それ以上に、自分という人間の価値を積み立てていくこと。
不確実な時代だからこそ、その視点が、個人にも企業にも求められているように思います。

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