会計税務に感じること

佐久市の中小企業診断士、花岡です。
私は現在、会計事務所に勤めつつ自分の会社を設立し経営コンサルを行っています。
来年には会計事務所を退職予定ですが、本コラムでは、会計脳がフレッシュなうちに、約8年間会計に携わって会計税務に対して感じたことを少し書いてみます。

1. 消費税の厄介さ
インボイス、軽減税率など端的に言って消費税の処理は手間が多すぎると感じます。
政府政党によっては、減税手法として消費税の時限あるいは恒久減税を掲げています。仕訳入力やチェックをする立場からすると、消費税を政治の道具にして度々変更することは本当にやめてほしいというのが本音です。
国の財政面を鑑みると、減税した際の「円の信認低下」は円安や輸入物価の高騰を通して更なるインフレを引き起こすと感じます。

2.簡易キャッシュフローの重要性
決算書の損益計算書に記載される税引後利益、あるいは法人税別表における所得金額、個人の場合は確定申告書の所得金額などがその事業者の利益となりますが、利益金額と実際の現預金残高の増減は一致しません。
この現預金残高の動きを捉えるのがキャッシュフロー計算書になります。カネが回らなければ会社も回らないため、決算の際、社長にキャッシュフロー計算書を見せて説明すると、決算書よりまじまじとご覧になります。
正確なキャッシュフロー計算書は作成がやや難解ですが、簡易的な営業キャッシュフローは「経常利益+減価償却費」で計算できます。設備投資や借入金などの意思決定時に「カネが回るかどうか」は上記の簡易キャッシュフローをまず計算し、「年間の借入金返済額が簡易キャッシュフローの範囲内に収まっているか」を確認してみると良いかと思います。
私自身は試算表や決算書を見たときに、簡易キャッシュフローを計算するのがクセになってしまっています。

3. 感覚と業績の一致
社長の話では業績好調のようだけど実際の試算表はそうではないことがあります。
この「感覚と実際の業績のずれ」を放置していると意思決定を誤る場合があり、誤った意思決定は業績悪化につながります。毎月会社さんの月次決算を行って、試算表をまじまじと確認することで感覚とリアルな業績を摺り合わせ、ずれを修正する必要があると感じます。逆に、試算表はそれほど見ていなくても感覚と業績の動きが一致している社長は、非常に的確に自社の状態を捉えていることが多いです。

4. 費用収益対応の原則
会計税務の世界には費用収益対応の原則というものがあります。
法人であれば文字通り「その期の売上に必要であった経費だけを費用として認める」というものです。
経営者の方の財務苦手意識は、多すぎる聞きなれない勘定科目に要因の一つがあると思います。ですが、売掛金や前受金、減価償却費や棚卸資産などは結局のところ費用収益を対応させるためのものです。
極論ですが、ほとんどの貸借対照表の見慣れない科目は費用収益を対応させるためのものだと認識してしまえばさほど難しくないと思います。

5. 節税の必要性
「節税」という言葉があります。
ネットやYouTubeで調べれば色々な手法が出てきます。
福利厚生の拡充など選択肢として有効なものもありますが、無策で解約返戻金有りの保険商品や倒産防止共済に加入することは、私は推奨していません。これらは課税の繰り延べに過ぎないため税金を払うより大きいお金が出ていき、キャッシュフローが悪化します。
会計税務のシステム上、税金を払わないとお金が残らない仕組みになっているため、家族経営でもない限り、課税の繰り延べをしてわざと赤字にすることはしないほうが良いと感じます。
解約時の雑収入分を役員退職金に充てるなど、出口戦略があれば問題ありませんが、毎期利益が出続けている事業者は解約のタイミングが無く、死に金になりかねない点に注意が必要です。
以上のような出口戦略のない繰延節税は推奨していませんが、例えば中小企業投資促進税制の機械装置の税額控除のような恒久減税(と言うんでしょうか・・・)はおすすめです。
しかし、税金を払いたくない気持ちもよくわかります。
当社も初めての決算を迎えますが、黒字の喜びに歓喜の舞を舞い小躍りし太鼓を叩きつつもキャッシュアウトに涙を流しながら納税しようと思います。

以上、簡単に感じたことを書いてみました。会計税務は面白い世界です。皆さんの何かの参考になれば幸いです。

花岡隆裕

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