木こりのジレンマに陥っていないか?~価格転嫁と差別化への第一歩~

こんにちは。中小企業診断士の竹村哲司です。
価格転嫁の必要性が高まるなか、下請法の見直しが進められています。原材料費や人件費の上昇が続く一方で、現場では「価格を上げたいが、言い出すのが怖い」という声が絶えません。発注元との力関係や長年の取引慣行、関係悪化への懸念など、背景には複雑な構造的課題が存在します。

このような状況を見ていると、よく知られる「木こりのジレンマ」の寓話が頭をよぎります。切れ味の落ちた斧で木を切り続け、「今は研いでいる暇がない」と言い訳する木こりの姿は、まさに現場に忙殺され戦略的な見直しを後回しにする中小企業の姿に重なります。
加えて、近年は多くの業種で製品やサービスのコモディティ化が進行しています。製造業の部品加工、建設業の下請施工、運送業の単価固定化にとどまらず、地域の小売、介護、理美容、士業なども例外ではありません。「どこでも同じ」と見なされる市場において、生き残るには“違い”の創出、すなわち差別化が不可欠です。
差別化には必ずしも大規模な投資や派手な販促は要りません。業務品質の磨き込み、顧客対応の丁寧さ、手間のかかる仕事を引き受ける姿勢。こうした地道な取り組みこそが、継続的な強みとなります。

そのためにまず必要なのは、時間の使い方の見直しです。アイゼンハワー・マトリクスに代表される「緊急度と重要度の分離」は、経営資源の再配分を考えるうえで有効な視点を提供してくれます。NASAの創設にも関わったアイゼンハワー元大統領は、まさにこうした優先順位の整理を通じて組織を動かしました。

私たち中小企業診断士もまた、事業者の伴走者であると同時に、自らも一人の経営者です。近年はコンサルティング業界の倒産件数が増加傾向にあり、2024年には過去最多の151件に達したという報道もあります(東京商工リサーチ調査)。

不確実性の高い環境下では、目の前の仕事に追われるのではなく、意識的に“斧を研ぐ時間”を確保することが重要です。それが将来を切り拓く力となり、明暗を分けることになるかもしれません。

関連記事

  1. 倒産、廃業の度に失われる雇用機会
  2. 強みを探すお手伝い
  3. 子供の頃から鉄道ファン
  4. 山林の整備と所有者不明問題
  5. 軸になる会社の腕前と会社の存在意義
  6. PMIとは-M&A成功の鍵-
  7. 「ありがとう」の反対は?
  8. 日本の少子化対策としての1000万一括支給案
PAGE TOP