会社内部に目をむけるだけで、売上向上します。

時間がない方向けにこのブログ記事を一文で要約すると、
「今すぐ、経営理念の共有、人材育成、人事評価制度の何れかに着手して、売上を伸ばしましょう」
です。

長野県最南端の中小企業診断士、中島正浩です。
南信州では果樹が元気に育っていて、来月には桃狩りが始まります。
もも、なし、ぶどう、りんごと品を変えながら、観光農園は12月まで絶え間なく続きます。
皆様、ぜひ南信州に足を運んでみてください。

さて、2カ月ほど前の4月25日に、今年の中小企業白書が発表されました。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/
より、無料でオンラインで読むことができるのですが、
じっくり読みたいときに、私は出版物を購入したりしています。
それほど、中小企業白書が好きです。

今回は白書でトピックとして立てられている経営者の「経営力」について
気付いた点を記していきます。

 

99%以上の企業で当てはまります

中小企業白書は、中小企業、小規模事業者について書かれています。
それはいったい、どれだけの企業に当てはまるのでしょうか。
中小企業、小規模事業者についての細かい定義はさておき、
企業数でいえば、全企業の 99.7% を占めています。
従業者数でいえば、70% です。

つまり、この記事(中小企業白書)はほとんどの企業に当てはまるといっても過言ではありません。

 

■理念を共有するだけで、売上が増えます

普段、経営者の皆様は会議(公式なコミュニケーション)や日常会話(非公式なコミュニケーション)を通じて、経営理念などを伝えていらっしゃると思います。
経営者トップの立場からすると、経営理念とかを共有することがどれだけ、売上や付加価値額に貢献するのか知りたいですよね。
普段やってきたことが意味があるのか、ないのかを。
こちらの図表を御覧ください。

出所:「2025年版中小企業白書」第2-1-21図 売上高の変化率(従業員への経営理念・ビジョンの共有への取組状況別、中央値)

従業員への経営理念・ビジョンの共有に取り組んでいる企業と、そうでない企業の比較です。
5年前からどれだけ売上が伸びたかを示しています。
情報共有に取り組んでいる企業は5年前と比較して、 8.1% 伸びたのに対して、
情報共有をしていない企業は 2.4% しか伸びていません。

おそらく、従業員の皆様も経営理念を共有されているので、自分たちがどの方向に向かっていくべきなのか理解しており、それぞれの担当者、部署で正しい判断ができた結果だと思います。

 

■人材育成をすれば、儲けます

同様に、人材育成についても調べてみましょう。
人材育成をしている会社、していない会社でこの5年間にどれだけ売上が伸びたかを比較しています。


出所:「2025年版中小企業白書」第2-1-56図 売上高、付加価値額の変化率(5年前と比べた人材育成の取組状況別、中央値)

人材育成への取り組みを増やした企業は、
5年前と比較して売上高が 10.7% 増加しました。
一方で、人材教育に積極でなかった企業は 2.3% しか売上高は伸びていません。

なぜなのでしょうか。

 

■人材育成がなぜ売上に寄与するの?

ヒントになる情報が、2022年度の中小企業白書にありました。
能力開発(人材育成)によって、社員のモチベーションがどうなるのというアンケート結果が示されています。

出所:「2022年版中小企業白書」第2-2-19図 能力開発に対する積極性別に見た、従業員の仕事に対する意欲

会社の能力開発(人材育成)にかける本気度によって、社員のモチベーションが左右されているようです。
能力開発に非常に積極的な企業は社員もそれに応えるのでしょう。
87.6% の社員が仕事に意欲的です。
一方で、会社が社員の能力開発に非常に消極的な場合は、
42.9% だけの社員しか仕事に意欲的ではありません。
なんとなくは想像できたのですが、これほどまでに影響があるとは思っていませんでした。
一つ前の図表に示された売上の変化率は、すべてこの結果の影響だとは思いませんが、
「要因の一つ」であるとは考えて良いと思います。

なお、場当たり的に能力開発に着手しても効果的ではないので、能力開発計画(人材育成計画)を策定することも重要です。
もし策定していらっしゃらないようでしたら、すぐに計画策定して、従業員の皆様に共有しましょう。

さて、おまけにもう一つのトピックを。

 

■社長の鉛筆なめなめ評価は危険

2022年度の中小企業白書に、人事評価制度(給与を決める明確な基準)についても記載がありました。
従業員数100人を超える企業では87.2%が人事評価制度を導入しています。
21人〜50人の企業でも57%の企業が導入しています。

明確な評価制度が運用された上での報酬であれば、社員の納得にも繋がります。
逆に言えば、まだ社長が独断で評価して、給与を決めている企業があるというのも事実です。
歯に衣を着せず言ってしまえば、社長の好き嫌いで評価が決まってしまうパターン。
その結果、どのような事象が生じているのでしょうか。

5年間での売上高増加率で見てみます。

出所:「2022年版中小企業白書」第2-2-38図 従業員規模別及び人事評価制度の有無別に見た、売上高増加率(中央値)

21〜50人の企業では人事評価制度が導入されている企業では 7.9% 伸びているのに対して、
導入していない企業では半分程度の 3.9% しか伸びていません。
100人以上の企業では更に顕著で
それぞれ 10.4% 、0.6% と、17倍もの差が生じています。

社長が鉛筆なめなめ(または好き嫌い)で評価して、
従業員の給与を決めている会社がまだあるようでしたら、危険です。
社員は納得していません。

不満の種があちらこちらでくすぶっています。
というか、社員の働くモチベーションはだだ下がりです。
すぐに、明確で透明性の高い人事評価制度を導入すべきですね。

 

■この記事のまとめ

組織にたいする働きかけは、間接的に売上の拡大、付加価値の向上に寄与しています。
それもちょっとやそっとのレベルではなく、先程のグラフを見てもわかるように、導入することで売上に相当な差が出ます。
では、そこにどれだけコストをかけるかという話になってきますが、
これだけ明確に数字が見えてくると明らかですよね。

今すぐ、経営理念の共有を行い、人材育成に着手し、給与の透明化(人事評価制度の導入)をしましょう。

しかし、次には「何をしたら良いのかわからない」という障壁が立ちはだかるかもしれません。
それに対する答えは明確です。
自分たちで考えてても大変ですし、それが正しいかの判断も難しい。

中小企業診断士に相談しましょう。

 

お問合せ先はこちら

 

関連記事

  1. デザイン経営はブランディングとイノベーションで構成 中小企業の競争力向上につながる「デザイン経営」とは?
  2. 創業時の心構え
  3. もの補助、持続化、IT導入…今年の3大補助金はどう変わる?
  4. ITシステムのBCP対策
  5. 消防団×中小企業診断士!?
  6. キャッシュレス決済の今後について
  7. 情報セキュリティ対策 してますか?
  8. 「ありがとう」の反対は?
PAGE TOP