環境経営について

中小企業診断士・行政書士 春原 眞一

私は行政書士のつながりで環境省のエコアクション21という環境マネジメントシステムの審査員もやっております。現在、地球環境問題は企業経営において避けては通れない問題です。環境に資する活動には様々な政策的な支援が用意されており、また、環境ビジネスは有望な市場でもあります。しかし一方でアメリカのトランプ政権がパリ協定から離脱したように政治情勢によって環境が大きく変わってしまう分野でもあります。その意味では企業にとって対応が難しいといえます。今回はその環境問題に企業としてどう対応するべきかということを一緒に考えていきたいと思います。
1. GXと政策支援について
GXとはGreen Transformation(グリーントランスフォーメーション)の略語です。化石エネルギー中心の産業・社会構造を、クリーンエネルギー中心の構造に転換していく、経済社会システム全体の改革への取り組みのことです。このGX実現のために様々な政策的支援が用意されています。
2020年10月に菅首相(当時)による「2050年カーボンニュートラル宣言」以来、脱炭素に向けた流れが急激に加速しました。さらに、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻等をきっかけに、エネルギー安全保障上の問題が改めて認識されたことも受け、「産業革命以来の化石エネルギー中心の産業・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換させ、経済社会システム全体を変革させること」、すなわち「GXを実現すること」が強く求められるようになっています。
経済産業省では今後10年間の官民によるGX投資を150兆円と見込んでおり、本年度予算でも多くの施策を盛り込んでいます。このこと自体が大きなビジネスチャンスになると考えられます。

2. 環境経営のメリット
環境経営には3つのメリットがあると考えられます。
① 企業イメージ向上
CSRや環境問題が注目されている現代社会においては企業イメージの向上につながります。環境経営は有効なブランディングになります。
② ビジネスチャンスの拡大
環境経営はビジネスチャンスの拡大にも貢献します。 環境に配慮した製品・サービス市場は拡大しており、消費者も環境への問題意識を高め、中小企業は取引先の大企業からの評価を高めます。また、建設業界では経営事項審査の加点になり、各種補助金の分野ではものづくり補助金や省力化補助金などの採択型補助金の加点になります。
さらに環境経営を行うことはそれ自体で事業活動を効率化し、コストダウンにつながります。
③ 投資家や金融機関の評価向上
企業イメージが向上し、ビジネスチャンスが拡大すれば、それだけ投資家からの評価もプラスになります。最近では環境に配慮した企業に限って投資するファンド等もあります。また、金融機関においても様々な支援策が用意されておりますので中小企業は一度取引銀行に相談していただけるとよいと思います。
3. 経営活動のPDCAサイクルの一部としてとらえる
それでは具体的な取り組みとしてはどのようにGXを進めるとよいかということですが、GXだけの取り組みを進めるとそれなりの経営資源を割かなければなりません。このため、経営活動のPDCAサイクルの一部として考えるのが合理的だと思います。PDCAサイクルをマネジメントとして運用するためにはKGIやKPIの目標値を設定して、その達成度合いで対策を考えて実施していくことになります。KGIには利益目標や売上目標、KPIには稼働率、歩留まり、訪問回数などを設定するのが一般的です、そのKGI・KPIの中に二酸化炭素排出量を入れ込んでPDCAサイクルをまわしていくというのが環境経営システムのあり方になります。実は二酸化炭素排出量は比較的簡単に算出できるようになっています。たとえば、エネルギーごとに換算係数がでていますのでエクセルなどを使って簡単に算出できます。下表は電力の二酸化炭素排出量算出の計算表で、各電力会社で排出係数が公表されていますので、それを使って二酸化胆道排出量を算出できます。

CO2排出量をKPIのひとつとしてとらえ、他の経営指標とともに検討対応していくことが有効なアプローチといえます。
4. 環境に資する製品の開発
社内でのエネルギー使用量の管理とは別に環境貢献型商品の開発が考えられます。事例としては従来は金属やプラスチック製の筐体容器だった部品を紙製のものにしたなどがあります。環境対応商品は成長市場なので、今後の企業戦略を考えるうえで重要なものになります。
5. 環境マネジメントシステムやツール
環境を経営活動に取り入れていくうえで、環境マネジメントとして運用されているのがISO14001やエコアクション21ということになります。ISO14001はISOの国際規格の環境版ですが、エコアクション21は環境が主体となって、環境省の外郭団体である(一社)持続性推進機構が進めるマネジメントシステムです。ISO14001に比べると中小企業向けの負担の少ないマネジメントシステムとして設計されています。
また、二酸化炭素排出管理については各種システムツールが販売されています。代表的なところでは以下のようなものがあります。
・アスエネ(アスエネ株式会社)
・zeroboard(株式会社ゼロボード)
・e-dash(e-dash株式会社)

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