小規模事業者の業務システム導入例

 

みなさんはMicrosoft社のAccessというソフトウェアをご存じでしょうか?Officeの上位プランには必ず入っているのでご存じの方も多いかと思いますが、30年以上前から存在する簡易データベースであり、小規模で簡単なアプリケーションが構築可能なソフトです。最新バージョンは2024年10月にリリースされたAccess2024であり、クラウド型サービス全盛の今でもしぶとく(!?)生き残って進化を続けています。それだけ全世界で根強い需要があるということなのでしょう。

そして実は最近、とある小規模事業者様(アルバイト含めて20名程度)に簡易的な業務システムを導入したのですが、そのプラットフォームとして選定したのがこのMicrosoft Accessでした。「なぜ今さらAccess?」といぶかる方もいらっしゃるかもしれませんし、実際クラウド型サービスはいくつか試用も含めて比較検討しました。しかしコアコンピタンス(中核)となる現行業務と既製品サービスとのギャップが大きすぎたことをはじめ、10年程度利用を考えた際のTCO(総所有コスト)、現行ほぼ紙ベースでの業務管理でありPCに慣れていない方が多い(=初心者でも扱いやすいインターフェースが必要)といった状況を踏まえ、事業者様と検討して導きだした末の結論です。

ただAccessを選択したとはいえ、色々と事情があって対応してもらえそうな業者選定は難航しました。そこでやむを得ず、私自身が「昔取った杵柄」というやつで開発をすることになりました。

さすがに最初はキャッチアップするのに一苦労しました。それでもやはり頭より身体が覚えているもので、1~2日で何とかデータベース設計とGUIの基本構築ができるようになりました。その後は、昔のバージョンでは無かった自動生成機能を使ったり、AIにコード例を聞いたり、事業者様との要件すり合わせてそれを即時機能にフィードバックをしたりと、他の業務の合間を見ながら比較的短期間でアジャイル開発を進めることができました。

既に納品して実運用に乗せていますが、久しぶりに自ら1人だけで開発(というほどのものでもないですが)をして思ったAccessでシステム導入した際のメリットとデメリットをいくつか挙げておこうと思います。

■メリット
・比較的安価でオーダーメイドのアプリケーション開発ができる
・サブスクリプション費用(=一方的な値上げもあり得る半永久的な固定費用)が不要
・インターネット接続が不要(=情報流出や利用不能のリスクも低い)
・レスポンスが早い(スタンドアロンであれば通信パケットのやり取りがないため)
・データベースが基本なので事業規模拡大の際はマイグレーション(他製品への移行)もしやすい

■デメリット
・初期導入費用がそれなりに必要(できれば補助金活用も検討したい)
・ネットを介した複数拠点での利用には向かない(できなくはないがパフォーマンスが悪い)
・万一に備えて何らかのバックアップ手段が別途必要(オンプレミスなので)
・機能拡張したい場合などはそれなりの知識がある人が必要

要するにAccessは小規模事業者はもちろん、中規模事業者でも部門レベルくらいまでであれば、今でも十分に活用できる「コスパの良い」ツールではないかということです。

ちなみに上記は事業者様にとってのメリット・デメリットですが、私自身のメリットとしては、開発を通じてその事業者様の業務がより深く理解できたこと、それにより周辺業務や売上向上策も含めた助言や提案に結び付けられるヒントが得られたといったこともありました。

以上、なにかご参考になることがありましたら幸いです。

中小企業診断士 等々力浩二

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