デジタルとアナログ
中小企業診断士の内田英明です。
コロナ感染症は完全終息していませんが、現在はもはや平時と言えるでしょう。振り返ってみると、コロナ禍を経て人間どうしのコミュニケーション手段はリアルからリモート・バーチャルに比重移動しました。地方在住であることの不利が緩和され、居住場所に左右されない柔軟な働き方も普及しつつあります。危機は革新を生み出す端緒になり得ますが、情報技術の進化によってコロナ前後で世の中の景色はそれなりに変わりました。
企業活動では、競争力強化や成長に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性、重要性が指摘されています。OMO(Online Merges with Offline)による顧客に対する価値提供の高度化や、IoT(Internet of Things)とAI(人工知能)との組み合わせによる生産効率向上やエネルギー消費量削減など、DXによる成果が出ているようです。
■そもそもデジタルとは?
さて日常的に使われているデジタルという語ですが、そもそもどんな意味なのでしょうか?生成AIのマイクロソフトBingに発問すると「数値や記号を用いて情報を表現する方式を指します。具体的には、0と1の2進数でデータを扱うことを指します」と回答してきました。私は大ざっぱに、デジタルとは定量的でかつ模倣が容易なもの(=コピペしやすい)と解釈しています。この2つの性質を有するデジタル技術は、短期間に広範かつ等加速度的に普及しやすいという特徴を持っています。たとえば、ChatGPTは2022年11月の公開からたった5日でユーザー数が世界で100万人を超えたと言われています。その一方で、フェイク情報の氾濫などデジタルに関わるマイナスの問題も深刻になっています。
■アナログもかなり大切
デジタルと対義のアナログは、定性的、模倣が困難(=コピペしにくい、されにくい)ということになりますが、経営学の視点から考えるとかなり重要な要素だと感じます。つまり、一般的に経営戦略で重要とされる差別的優位性や模倣困難性はデジタルよりもアナログと親和性が高そうだからです。
経営環境の変動スピードが速く、かつ振れ幅が大きい昨今では、時間をかけずに手っ取り早く成果を生み出す効率性が優先され、時間をかけた積み重ねはどちらかというと軽視されがちです。しかし、アナログな暗黙知、職人技など人的なスキルの蓄積は、差別的優位性や模倣困難性の土台になり得えそうです。やはり人材の確保と育成は普遍的に大切なのです。
■小規模事業者こそアナログを活かす
職人による昔ながらの手作業なのでたくさん作れない、という和菓子店があったとしましょう。手作業は非効率的なので機械化・自動化する・・・この発想は正解だと思います。しかしながら、職人による手作業、たくさん作れないという事実を弱みではなく強みと捉える発想も小規模事業者には大切です。商品の磨き上げ、さらに手作りの価値訴求に向けたプロモーションを地道に継続することで、他店との差異性を確立できる可能性があります。アナログにこだわることも立派な戦略だと思います。