知的財産権の重要性を理解するために

知的財産権の重要性は、企業のおかれたフェーズや業種によって異なるかもしれませんが、事業をある程度拡大しようと思えば、必ず知財戦略が必要となる時期が訪れます。特許庁のレポートでは、知財を所有する企業が、売上高営業利益率が相対的に高いことが示されています。このデータから、知財と企業の成功には明確な相関があると理解できます。

それにもかかわらず、経営者や役員の皆様に知的財産権の重要性を理解してもらうのは難しいと感じます。そもそも、知的財産権はその重要性が構造的に見えにくいものです。直接的に売上に結びつくケースは少なく、リスクが表面化するのはかなり後になることが多いです。企業が「あのときにこうしておけばよかった」と後悔する「あのとき」は、しばしば数年前に遡るものです。

そのため、単に「知的財産セミナー」に参加して話を聞いても、なかなか実感を持てないのが現実です。

では、どうすれば知財の重要性を認識できるのでしょうか。人は一般的に、痛い目に遭わないと物事の重要性を実感できないものです。極端な話、早い段階で知財トラブルに遭遇した方がよいのではないかとすら思うことがあります。なぜなら、事業が拡大すればするほど、トラブル発生時のコストは膨れ上がるからです。

とはいえ、意図的にトラブルを引き寄せるわけにはいきません。そこで、できることは潜在的なリスクをできるだけ明確にすることです。自社の活動が他社の特許権や商標権を侵害していないか、もし侵害していた場合、どの程度の対応費用や損害賠償が発生する可能性があるのか。発生した場合、企業活動がどのような危機に陥るのか。

これらのことを繰り返しお伝えし、自社の問題として認識してもらうことが重要だと考えています。

中小企業診断士 白井郁也

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