事業承継のタイミング
事業承継に関する相談で、会社を訪問する機会がありました。社長は80歳を超えていましたが、親族等に後継者がいないため、第三者への承継(M&A)を検討したいという内容でした。いろいろ話を聞く中で、従業員の中に大変有能な方がいることがわかり、「一度後継者になる意向がないか話をしてみては?」と提案したところ、社長からも是非にということで、その従業員と話をすることになりました。
翌日の会社終業後、、早速その従業員と面談をしました。実はこの方、15年ほど勤務されていたのですが、近々に独立して会社を立ち上げる計画をしており、辞表を提出する予定だったとの事でした。急遽、社長が退社を引き留める事態になったのですが、本人はだいぶ前から思案しており、既に会社登記の準備もしているとのことでした。
図は、中小企業庁が掲げているおなじみの5つのステップです。中小企業診断士としては、承継準備としてステップ2や3のアドバイスや支援を実施する機会が多いと思います。しかし最近は、ステップ1やそれ以前(事業継続への危機感の認識)を啓蒙していく存在としての必要性もあるのではないかと思っています。
県外で事業承継事例を聴くことがありました。表現の仕方は良くありませんが、幸運にも社長が突然亡くなったことで事業承継が円滑に進んだという生々しい話でした。生前は社長がいろいろなトラブルを起こしており、役員・従業員のほとんどから早く経営から手を引いてほしいと切望されていたそうです。支援された診断士の方の「時として経営者自身が会社存続の弊害になる」という言葉にはいろいろ考えさせられました。
柳澤 智生